誰かのことを思い、選び、届けられるギフト。その一つひとつに、物語は存在しています。
おそらく、それらは微笑ましいエピソードであることがほとんどでしょう。
一方で、ほろ苦いケースがあるというのも、心に留めておきたいところです。
そう、ギフトは人の気持ちのあたたかみが感じられる反面、マナーを守れていない場合だと、せっかくの喜びが半減することになりかねません。
マナーや常識を知らなかったばかりに、贈り先のお相手だけでなく、周囲に対しても困惑させてしまうことが考えられます。
そうならないためには、やはりあらかじめマナーを知識としておさえておくことが必要です。
本記事では、主なシチュエーションをいくつか取り上げ、それぞれに適したギフトマナーを解説します。
長寿・還暦祝い、昇進祝い、香典返し……等々、各シーンに応じ、作法を心得ておけば、贈る側としても不安に駆られず、気持ちよく渡せるはずです。
ギフトマナーについて実はよくわからず、これから学びたいという方へ。
今回の記事は、いうなれば(つまらないものですが)ちょっとした贈り物です。
ぜひ、参考に受け取ってもらえるとありがたく思います。

はじめに長寿祝いや還暦祝いに際してのギフトマナーについてお伝えします。
まず、長寿をお祝いする年齢ですが、一般的に満60歳(数え年で61歳)からです。
つまり、還暦にあたる歳からはじまります。
ちなみに、以降のおめでたい年齢については以下の通りです。
- 66歳にあたる緑寿(ろくじゅ)
- 70歳にあたる古希(こき)
- 77歳にあたる喜寿(きじゅ)
- 80歳にあたる傘寿(さんじゅ)
- 88歳にあたる米寿(べいじゅ)
- 90歳にあたる卒寿(そつじゅ)
- 99歳にあたる白寿(はくじゅ)
- 100歳にあたる百寿(ももじゅ)
- 108歳にあたる茶寿(ちゃじゅ)
- 111歳にあたる皇寿(こうじゅ)
そうしたなか、念頭に置いておきたいのは還暦が果たして長寿なのか否かという点。
一昔前とは異なり、平均寿命が延び、定年後も元気に働く方々が増えている現代においては、還暦祝いを長寿祝いに含むのは違和感があるかもしれません。
お祝いされる側もお年寄り扱いされることを本意でないと感じる方は多いでしょう。
したがって、60代の方に対しては長寿という枠で祝うのではなく、あくまで還暦(もしくは緑寿)への祝意を表す形が無難でしょう。
常識的なマナーというよりは、気遣いとして意識できるといいと思います。
それでは、具体的にどのようなギフトがふさわしいのでしょうか。
定番はお相手の趣味に沿ったもの。たとえば、ゴルフ用品やスポーツウェア、バッグ、アクセサリーなど。お酒が好きな方には銘酒、地酒はもちろん、焼酎グラスなどの陶器もおすすめです。
「還暦とはいえ、まだまだ元気ですよね、若いですよね」といったメッセージが暗に込められていると、上述したように長寿祝いとは区別を図れるかと考えます。なにより、贈られた本人が喜んでくれるはずです。
他方、70代以降になると、多くの方が現役を退いているように思います。ゆえに古希からは、長寿祝いにふさわしいギフトを選ぶようにしましょう。
健康に関するグッズも定番ですが、時間ができる分、体験を提供するのもいいでしょう。後者はたとえば温泉旅行のチケットなどをおすすめします。また、旅行先で酌み交わすのに特別なお茶やお酒の器があれば、よりうれしいはずです。セットで贈ってみてはいかがでしょうか。
気を付けたいのは食品です。以前よりも食が細くなったり、飲み込む力が衰えていたりと、お相手は身体に支障をきたす恐れのある高齢者であるということを忘れてはいけません。リスクヘッジのためにも食べ物、飲み物は極力控えた方がいいでしょう。
そして、ギフトに欠かせないのがお祝いの言葉です。
“おめでとうございます”に加え、これまでの活躍に対するリスペクトやまだまだ元気な姿をみせてほしいといった願いを書き添えれば、きっと喜ばれることでしょう。
古希以降の方々に対しては、自分たちの世代が頼もしく育っていることを伝えてみてください。
「後進に託した未来は明るい」
そう思い安心感を抱くとともにうれしい気持ちになってもらえるはずです。
還暦もそうですが長寿祝いにこれといった正解はありません。とはいえ、体調面への配慮や個々の性格、歩んできたキャリアなど随所でお相手のパーソナルごとに意識したいポイントは異なります。
お祝い金の相場も10,000円から50,000円(もしくは上限100,000円)と目安にしては幅広く、地域によっても変わってきます。
いずれにせよ大切なのは、お相手のライフスタイルへの目配り、心配りです。
長寿祝いと一括りにせず、その方の気持ちや状況を考えることが最低限のマナーだと考えます。
そう心がけて実行することで、おのずと喜んでもらえるギフト選びができ、メッセージもしっかり伝わるでしょう。

昇進祝いもしくは栄転祝いのケースでは、転勤を伴うことも考慮し早めに渡せるようスケジュール管理から大事だといえます。
一般的に、正式な辞令が発表されてから2週間以内には届けたいところです。
また、職場の慣例に従うことはもちろん、周りの人たちに対する配慮もマナーとして持っておく必要があります。周囲には昇進できずに悔しい気持ちの人も少なからずいると考え、個人で贈る場合、その大切なギフトは、できれば社外で渡せるようにしましょう。
そして当然、何を贈るかも重要です。
その際、最低限のリサーチは必ず行うようにしてください。
お相手が興味・関心のあるものは何か。
仮に趣味・趣向を知らなければ、負担を掛けない程度で共通の知人に相談してもいいでしょう。苦手なものを選んでしまわないように情報収集はどうしたって不可欠です。
費用の相場については、会社、友人、身内といった関係性でも変わってくると思います。
大抵は3,000円から5,000円、親密度や思い入れによっては10,000円、肉親の場合だと30,000円ほど掛けることもあるでしょう。つまるところ、長寿祝いや還暦祝い同様幅広いものだと考えてください。
そうしたなかでおすすめしたいのは、趣味や好みに応じた品物はもちろん、特に情報が集まらない場合、ハンドクリームなどのコスメ系や化粧品、フォトフレーム、メガネケース、ヒゲケースあたりの実用品です。悩んだら、これらをチョイスしてみてはいかがでしょうか。
実際に日常生活に役立ちそうなものは、満足してもらえる可能性が高いです。
▶︎ 内祝いでのギフトマナーについて
幸せのお裾分けの意味がある内祝いは、結婚や出産、子どもの進学、新築・引っ越しなどさまざまなタイプがあります。
そうしたなか、共通する悩みを挙げるなら、まずは郵送問題でしょうか。
「手渡しでなければ失礼にあたるのではないか」と気にされる方は少なくないようです。
結論、問題ありません。むしろ、遠方からはるばる足を運んで来られては逆に相手は恐縮してしまうかもしれません。それゆえ、手渡しにこだわる必要はないと考えます。
もちろん、届けるタイミングは大事です。
式を挙げなかった、もしくは招待しなかった方に向けての結婚内祝いの場合、入籍や結婚式から1ヶ月経った後に贈るのが一般的でしょう。そのほか、進学は1ヶ月以内、出産は生後1ヶ月から2ヶ月、新築・引っ越しについては住みだしてから1ヶ月後もしくは2ヶ月以内が妥当に思います。
費用の目安についてですが、結婚式に招待できなかった方からお祝いをいただいていた場合、その半分の額でお返しをするのが通例です。
また、出産に対しても同様に半額が目安と考えていいでしょう。その際、気を付けてほしいのが差出人の名前です。配送伝票には両親の連名を記載したうえで、出産祝い用の熨斗(のし)紙には生まれてきた赤ちゃんの名前を書くようにしてください。
新築内祝いも同じく半額相当のギフトが一般的です。一方で、物にこだわらずとも、新居にお招きし、おもてなしを施すこともまた、マナーに則ったお返しの一つといえます。
スイーツ、コスメ、アクセサリー、小物、家具……等々、相手の好みも交えながら贈るようにしてみてください。もしくは旅行券など体験を提供するのも選択肢の一つに入れていいでしょう。
▶︎香典返しでのギフトマナーについて
香典返しとは、お通夜やご葬儀で故人にお供えいただいた金品へのお返しを指します。
弔事が滞りなく終えたことを伝えると同時に、お悔やみいただいた方々に対する御礼として贈るものです。
当日返しもありますが、大抵は忌明けの時期に贈ります。宗派によって異なるとはいえ、大体1ヶ月から2ヶ月後です。
品物の金額については、内祝いと同じく半額程度が目安とされます。
会社の経費ではない個人からの私的な香典は、上司や取引先であっても弔問客同様にお返しするのが常識です。加えて、仕事上のパートナーである彼・彼女らには、休暇明けの出社時にもきちんと差し入れを渡せるといいでしょう。
▶︎ やってはいけない!ギフトマナーのタブー
ギフトマナーのなかでも特に注意してほしいタブー事項を紹介します。やってはいけないこととしてしっかりと認識してください。
先にもお伝えしましたが、還暦祝いではお相手をお年寄り扱いしないよう配慮が必要です。
長寿祝いもすでに触れた通り。喉をつまらせる可能性のあるものやカロリーの高い食品を贈るのは避けましょう。
そして、数量。
ただただ多くては持て余してしまう可能性があります。喜ばれるためには質を重視しましょう。
そうはいってもやはり、値段が高すぎるのも考えもの。というのは、お返し時のプレッシャーにもなりかねません。この辺りは、バランス感覚が大事です。
知らず知らずに渡してしまい、相手を怒らせる可能性があるものも常識としておさえておきましょう。
たとえば、靴やスリッパといった履物は目上の方に対しては失礼にあたります。
一般的な習わしとして踏み台にするという意味がつきまとうため、お相手を不快にさせてしまう恐れが大きいです。
「仕事に精を出すように」の文房具類、「もっと気を引き締めよう」のベルト関連、「顔を洗って出直そう」の洗面道具……等々も目下から目上への贈り物としてふさわしくない解釈ができてしまうので注意しましょう。
縁起が悪いとされるものも避けなければなりません。
結婚のお祝いだと、刃物は(縁を)切る印象を与えがちです。引っ越し祝いでは、キャンドルやライターなど火事を連想させるものがNGだと知っておいてください。お見舞いの場合、鉢植えの花が病気やケガを根付かせるという風に受け取られる恐れがあります。
もちろん、お相手からの要望があれば、上述した品々でも特に問題はないと考えますが、その場合もあくまで届けたいのはお祝いの気持ちであることを(他意は含まない旨とともに)、しっかり伝えられるのが望ましいでしょう。
また、香典返しの際には大きな注意点があります。そう、忌事であるということ。そのため、慶事のように熨斗(のし)を添えてはいけません。水引だけが印刷された掛け紙を使うようにしてください。
〜実はタブーではなかった!?喪中でも贈っていいもの〜
喪中であれば、贈り物はすべて避けるべきと考える方が時々いらっしゃいます。
けれども、マナー上決してそういうわけではありません。
たとえば、お中元。あくまで季節のご挨拶であってお祝いするものではないという考えのもと、贈っても問題はないと捉えて大丈夫です。ただし、どのように贈るかは気を配りたいところでしょう。具体的には、時期は忌中を過ぎてから、熨斗は無地にしてください。
加えて、喪中であることをご存知の方に対してはあらためて会葬やお供えのお礼を挨拶状に含めてもいいかもしれません。そして、知らなかった方には、喪中である旨をそれとはなしにご報告する形で一文添えてみることをおすすめします。
なお、贈り先のお相手が喪中であっても同様です。お相手への思いやりを前提に、お中元のやりとりは続けてもかまいません。
ちなみに新年の挨拶はお祝いにあたります。当然、結婚式もおめでたい催し事です。
近年、忌中以降であれば問題なしといった条件にて許容される風潮こそありますが、お祝い事に関しては喪中時どのタイミングでも避けるのが無難だと考えます。
▶︎ シーンごとのギフトマナーに則り、心を込めて届けよう!
ギフトにはその品物だけでなく、たくさんの喜び、祝福、感謝が包まれています。だからこそ、知識不足が仇になってはいけません。
基本作法や常識をしっかりとおさえることは必須です。
各シーンに応じたマナーで以て、決して義務的にならず心を込めて贈るギフトは、お相手とのつながりを深める貴重な宝物といえます。
これからも多くのギフトを届け、お世話になっている大切な方々と快い関係を構築してください。